INTERVIEW

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米農家(葛尾村 広谷地地区)
松本 邦久さん

コメ作りと畜産は、震災前から行っていました。私の作ったコメは、去年から葛力創造舎の下枝君たちが作っている日本酒「でれすけ」に使われています。民泊施設であるZICCAで提供されているご飯も私が作っているものですね。コメづくりは手を抜いて作れば悪いものができ、一生懸命手をかければ良いものができます。コメが売れれば、次の年のコメ作りの資金になり、良いコメをさらに増やすことができます。良いコメができたときは、頑張って手をかけて育てたからだと実感することができますね。

震災直後は避難しましたが、育てていた牛が心配だったこともあり、まもなく村内パトロールに参加する形で村に戻ってきていました。翌年からは水稲試験栽培にも参加して、ずっとコメを作っています。3年前に品種を「里山のつぶ」に変えたことを除けば、震災前と比べて日頃の生活は何も変わりません。何か変わったことがあるとすれば、私自身が「無理をしすぎず、普通を目指して活動するくらいがちょうど良い」という考えを持つようになったことです。

牛を育てているのでそんなに遠出もできませんし、用事をたくさん作ってしまうと生活のサイクルが上手く回せなくなるので、何事も負担がかかりすぎないようにやらなければならないと思うようになりました。時間は自分で考えて作るものですからね。

人よりも儲けようと思えば、人の倍は苦労して働いてより良いものを作らないと売れないし、儲かりません。テレビで見るような儲かっている人は、ものすごい努力をしていますよね。何十年もかかってやっと良い環境を整えて、良い商品を作ることができているんだと思います。でも私は平均でいいんです。自分が最低限生活できることがいちばん大切なので、利益についてはどこかで折り合いをつけることが大事ですね。そうすれば自分の時間ができるので楽ですよ。私は今の生活に満足しています。

そうやってできた 時間を使って、農産物の差別化や付加価値について考えています。これからの農業は、人と違うものを作らなければやっていけない時代になるし、普通に売っていたのでは大規模経営の人に勝てませんから。ただ、ハイリスク・ハイリターンの挑戦ではなく、地道に必ず成果を出せる方法を試行錯誤しています。

そういった考えもあり、お酒を作りたいという下枝君の話を聞いて協力させてもらっているんです。今年度は造る日本酒の本数を昨年度の倍の2000本に増やすと言っていました。下枝君の活動はたくさんの村の人が応援しています。私も私が無理なくできる範囲のことで、協力したいと考えています。

(2020年9月取材)


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