PLAYER INTERVIEW
ヘルベチカデザイン株式会社は、2011年設立のデザイン事務所です。社長以下現在のメンバー6名は、私を除いてみな福島出身。東京出身の私は3年ほど前に東京事務所で採用され、その後郡山市のヘッドオフィスに異動しました。福島は自然が豊かで、気分転換するにも車ですぐに山に行けたりするのがいいですね。
デザインの仕事とは、ただおしゃれなロゴやパッケージを作ることではありません。結果的にはツール制作であっても、まずそのツールに至る道順を整理し、お客様の課題を解決したりビジネスを伸ばしたりするためのソリューションを提供すること。そしてその会社の良さを最大限に引き出すことが、デザインの使命なのです。だから私たちはデザインした後も、お客様がそれをきちんと実装して使い続けていけるようなアフターフォローを大切にしています。福島県内のお客様がほとんどですが、長いお付き合いになることが多いですね。デザインから派生して仕事の幅がどんどん広がり、動画の制作などもご用命いただいています。
今回は葛力創造舎さんより、「かつらおムービーメーカーズキャンプ」での技術サポートを当社にご依頼いただきました。大学生のみなさんが葛尾村民の方々といっしょに村のプロモーションビデオを制作するという1泊2日のイベントで、他の協力会社さん3社とともに支援に入ったものです。当日はいろいろハプニングもありましたが(笑)、最後は1分半ほどの動画「Challenging Katsurao葛尾村の挑戦」を完成させることができて良かったですね。ネットで公開した後、さっそく「行ってみたい」「移住してみたい」などの反響があったと聞いています。
個人的な意見ですが、福島ではまだ、当社が提供しているような本当の「デザイン」には不慣れな方が多いと感じます。「デザイン」という言葉自体、一般の人に浸透していないというか。福島は農産物にも海産物にも恵まれていますが、東京に近いため新鮮な素材のまま市場に届けることができてしまう。だからかえって商品開発――そこにデザインが生まれるわけですが――の必要を感じにくいのかもしれません。そう考えれば、デザインの力で福島の産業を盛り上げていく余地はまだまだ大きいのではないでしょうか。
ちなみに、当社がデザインを手がけた「Cool Agri」という県内の若手農家の団体があるのですが、今回の葛尾村キャンプでお話しした村の若い農業者の方がその活動をご存知で、事業戦略にはデザインが大切だと思う、とおっしゃっていたんですよ。私たちが撒いた小さな種がこんなところへ飛んでいって芽を出しているんだと感じて、うれしくなりました。
地域づくりに尽力する葛力創造舎さんとはこれからもご縁があれば協力し、村の再生の一助となれればと思います。
(2018年1月取材 M/N)