INTERVIEW

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私立モーモー学園 園長(葛尾村野川地区)
坪井 泰男さん

私は現在、和牛の専門繁殖飼育事業を経営しています。以前は畜産業と共に鉄工所も経営していましたが、徐々に頭数を増やし畜産・飼育事業へと舵を切っていきました。

和牛の専門繁殖事業は子を産ませて市場(せり市)へ出荷させる畜産業でも一番手間がかかる業態と言われています。しかし業務内容を見直し効率化など工夫をすれば、実はそれほど手間はかからないのではないかと自分は思います。決して重労働ではなく、作業時間も短く自分の自由な時間が作りやすく、今の若者には向いている業態かもしれないね。

震災の時は大変だったよ。二本松市で削蹄(牛の爪切り)をやっている時で大きな揺れが続きびっくりしたね。自宅が心配で(葛尾村)に帰ってみたら、家や牛舎は被害が少なく安心しました。古い牛舎だったから揺れに強いんだなぁと感じたよ。

ただ、葛尾村内で避難指示が出たときは、大変だったね。隣の田村市で畜産業を営んでいる方へ無理を言って私を含め村内同業者の牛を二十数頭預かってもらいました。今でも大変感謝しています。牛舎や専用の機械が揃っているので震災後も畜産業は営んでいくつもりだったのだけど、放射能問題や営業継続のアドバイスについて行政に相談しても、対応が曖昧なことに嫌気がさして、しばらくはなかなか再開できなかったですよ。

それでも葛尾村産の和牛が減っている現状に危機を感じたので、2018年に社名を「私立モーモー学園」に変え再スタートしました。インパクトが強い名前にして、みんなに注目してほしいと思ってね。葛尾村は昔から馬と牛の生産が盛んで、荒馬の産地だったから、その文化も絶やす訳にはいかないと強く心に決めていたよ。

震災前と後では経営の考え方は変わってきました。以前は頭数を増やし収益を上げるのに必死だったけど、視点を変えて自分のできる範囲だけでやろうと考えました。頭数を増やせばリスクが増え利益も薄い。自分の自由な時間もなくなってしまうしね。頭数の上限を決め、うまくサイクルを回せるようになって時間ができたので、今では趣味のバイクでツーリング、友人とゴルフ、温泉と楽しんでいるよ。

今は、この場所を継いでくれる人を募集しています。これから畜産業をスタートする人はハード面がネックになりますが、ここは機械や設備は全て揃っているので自己資金もかからずリスクが少ないのではないかと思います。若い人が葛尾村に目を向けてもらえるのはうれしいし、ここに定住してくれたらなおうれしいね。若い人にはきっと夢があるから、その夢に向かって挑戦する人を自分はこれからも応援してくよ。

(2022年7月取材)


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