INTERVIEW

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東京大学1年(東京都)
星 葵衣さん
復興庁「復興・創生インターンシップ事業」(2020年夏季)インターン生

私は、一般社団法人葛尾むらづくり公社でのインターンシップに参加しました。このインターンを知ったのは大学の先輩に紹介された「地域ベンチャー留学」というイベントへ参加したときでした。葛尾村との出会いは実は高校生の頃で、被災地への視察で葛尾村を訪れる機会があり、葛力創造舎代表の下枝さんのお話を聞いたことがありました。当時、高校のスーパーサイエンス部に所属し、放射性物質の研究や、国内外にむけて風評被害・汚染水・除染土等の問題提起をしていた私は、放射線関連の安全性を確保・発信することが自分たちにできる有効な復興へのアプローチ方法になると思っていました。しかし、下枝さんの「結」の話を聞き、それ以上に、地域に住む人たちの生活や暮らしに密着したアプローチが必要なのではないかと思うようになりました。新たな気づきを与えてくださった下枝さんの話は、私が進路を決める際に大きな転機になりました。

私が今回の実践的インターンシップに参加した目的は大きく二つあります。一つは「まちづくり」の現場に実際に関わってみたかったからです。高校生の頃から漠然と将来まちづくりに関する仕事がしたいと思っていましたが、地域に入って何か活動した経験はなく、自分の理想像やいろいろな考えがいつまでも机上のものでは意味がないと考えました。

もう一つは、自分のキャリアビジョンを深め、広げたかったからです。まちづくりの仕事といっても、自分はどの立場からどのように関わりたいのか、具体的にイメージできていませんでした。ソフト面でもハード面でもまずは一度体験して自分の関心や特性を知りたいと思ったのです。

インターンの内容は「葛尾村の移住政策を提案せよ」というものでした。チームは私を含めて4人。やり取りは基本ズームを使ったオンラインで行い、最終成果物として3つの政策案をまとめ上げ、受け入れ企業に提出しました。また、葛尾村長への提言の機会も作っていただき、成果物を直接お渡しすることもできました。

このプロジェクトを通して、ひとつの政策を形にするまでの苦労を知ることができたと同時に、自分の視野の狭さにも気づかされました。ある案を考える際には、関わる人や団体・企業・地域の利害関係を広く考える必要があることを、身をもって実感しました。
また、最初は自分たちに求められていることが明確にわからず、不安な思いもありましたが、受け入れ企業担当者の方やチームメンバーとこまめにコミュニケーションをとることで、乗り越えることができたと思います。

全面オンラインが原則だったインターン期間中、最も印象に残っていることは、実際に現地を訪問する機会を持てたことです。葛尾村の「ZICCA」に5日間滞在しましたが、そこで出会った人たちとの絶妙な距離感が心地よかったし、帰ってきたときに「お帰り」と言ってくれる人がいる温かさを感じました。夜、談話室の机を囲んでいろいろな話ができたのもとても良い経験でした。私は初対面の人に心を開いて話をするのは苦手だったけれど、「ZICCA」にはそれを受け入れてくれる空気感があって、そこで新たな友人と出会えたことに大きな価値を感じています。葛尾に来られて本当によかったです。

インターンは終わりましたが、私はこれからも葛尾村との関係を持ち続けたいと思っています。今回提案した政策は、葛尾村の住環境などの改善によって移住を後押しするようなハード面の整備に関するものでしたが、ソフト面への興味も同時に増したのです。実はチームメンバー間ではソフト面に関する案もたくさん出ていました。中には「お試し移住」とか「ZICCA」に次ぐ場づくりとか、実際にやってみたい案もあり、それを一緒にやろうって言ってくれるメンバーがいることが嬉しかったです。葛尾の方々も(それをやるために」「戻っておいで」と言ってくれました。そうやって受け入れてくれる環境は希だと思うので、このご縁を大事にしていきたいと思います。

インターンを終えて、改めて地域に関わる仕事って素敵だなと思いました。仲間と楽しく活動することがそのまま仕事になったら最高だろうな、と。「住民主体」のまちづくりは当然ですが、そこに関わる自分がワクワクするかどうかの視点も大切にしたいと思うんです。それを実現するためにまずは学校に通い、理論や手法を学び、勉強に励みます。そして、葛尾村に限らずいろんな地域に飛び込んで、実際に自分で考え、悩み、手を動かす経験をどんどん積みたいです。やりたいことが明確になったときに自分の技量不足であきらめるなんてことがないように。そして将来的には、愛着のある福島でのまちづくりに、自分なりのやり方で貢献できたらいいなと思っています。

(2020年10月取材)


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