INTERVIEW

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葛尾村役場 地域振興課地域づくり推進係
松本 勝好 さん

私は葛尾村出身で、震災前から村役場に勤めています。役場では営農再開事業や獣害対策(主にイノシシ)、ほ場整備、放射線測定業務の運営、葛尾村地域おこし協力隊等の農政・農地の主担当として関わっており、他にも農業委員会事務局として農業委員会活動全般に関わっています。

戦後の葛尾村では養蚕業が盛んで、蚕(かいこ)を育てるために傾斜地を開墾して、桑の木を育てていました。しかし、時代の変遷と共に廃れてしまったこともあり1970年代ごろからは傾斜地の利用も兼ねて葉タバコの栽培が始まりました。葉タバコもまた最盛期を迎えたのち、時代の流れには逆えず2000年代に入ったころから廃作する農家が増えてきました。

もともと、村の農家は、水稲+葉たばこ+畜産の組み合わせを中心に生計を立ててきました。家畜の堆肥を農地に還元する、いわゆる循環型農業については規模こそ小さいながらも昔から当たり前に行われてきました。

時代の需要に合わせて農業を展開してきた葛尾村にとって、震災による影響は大きなものでした。除染作業のため表土を剥がなければならず、先祖代々作ってきた作土層が失われてしまいました。村は消費地から遠いという立地条件と畑が小さいということと気候の問題から大規模な畑作に向いていない土地柄でした。そのせいもあり、村の農家の方々は昔から水稲や葉たばこのような単価の決まった作物しか作らない風土があったと思っています。震災前に、一般の市場に畑野菜を出荷していた農家は少なかったと記憶します。

震災後、表土剥ぎとあわせて、除染後のこれらの農地を今後どのように利用するかという問題も出てきました。

私は、葛尾村の農業における良いところは、畜産業を大規模化しやすい土地柄であることと、山を掘れば水がでてくることと思っています。

新年度からは、新事業である葛尾村地域おこし協力隊農業版を実施します。都会から村に移り住んでもらい、最大3年間村、畜産農家の元で研修を受けてもらい、自立して営農して頂くか、そのまま研修先の農業法人へ就職していただきます。年齢や性別などは気にせずにやる気をもって来ていただくことが重要であり、経験を通じて葛尾村で畜産を行うメリットを感じ取ってもらいたいと考えています。

一方で、先程お話したとおり、葛尾村の農業には他の地域にはない難しさがあります。葛尾村は山間部に位置するため、畑作には不向きな気候です。傾斜地も多く、農地1区画の面積は大きいとは言えません。そのため、平地の多くは水稲が占めています。行政の役割は農家さんが農業をしやすいよう様々な環境を整えることです。着実に営農再開は進んではいますが、より多くのマンパワーを必要としている状態です。今現状、個人がそれぞれ農業を行っている状態です。人が増えて、村単位で農業をとらえられるようになれば、さらに農業は盛んになると思うのです。

私は、移りゆく社会に合わせて農業も形を変えていく必要があると考えています。例えば、AIに代表されるスマートテクノロジを活用した農機具を活用して、人手をかけない管理を導入して行く必要があると思います。人間にしかできないこと以外は機械にまかせます。農業の世界において選択と集中を実現することにより、利益を確保していかないと、なりわい農家としてこの先10年を生き残ることはできないと考えています。もちろん、なりわい農家も大切ですが、昔からいる多くの生きがい農家の存在も大切です。今後も各種事業を展開していきます。そして、「農業でご飯を食べていくんだ」や「葛尾村で農業がやりたいんだ」と考える人を増やしていきたいです。そして、農業を入り口に村に帰ってくる人や、新たに定住する人を増やしていきたいと思っています。

(2021年3月取材)


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