INTERVIEW

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葛尾創生電力株式会社 副社長
鈴木 精一さん

葛尾創生電力株式会社は、電力の自給自足で村に経済循環を生み、災害時には電力の自立によって村民の生活を支える「葛尾スマートコミュニティ」の実現のため、2018年10月に設立されました。自然エネルギーを活用した村づくりを通して、住民が安心して豊かに暮らせる社会を目指しています。

スマートコミュニティとは、太陽光や風力などの再生可能エネルギーを最大限活用し、一方では、エネルギーの消費を最小限に押さえていく社会を理想に、自分たちで生活する地域のエネルギーを自分たちで作り出し、エネルギーを有効活用する次世代の社会システムのことです。日本各地で導入が試みられていますが、地方ではあまり例がありません。葛尾での取組みは先例になると思いますが、ただやみくもに新しさを追求するのではなく、地域の伝統や文化などの良さを残して、中山間地域における新しいモデルをつくっていきたい。葛尾村でこの事業を進める意義はそこにあります。

葛尾創生電力の現在の発電は太陽光がメインですが、いずれは風力やバイオマス燃料も整備していこうと考えています。電力の小売りも行う計画で、一般家庭や事業所、公共施設などすでに100件ほどの契約予定があります。こうして「葛尾村産」のエネルギーの販売で得た収益を地域に再投資することで、持続可能な経済循環を創出できます。また、震災後に人が極端に少なくなった葛尾村でこうした取り組みを進めれば、地域に産業・雇用を生み、それが村の再生にも繋がるでしょう。

私は1987年から2015年3月まで福島県職員を務めていましたが、かねてより日本のエネルギー供給には大きな課題感を持っていました。資源に乏しい日本のエネルギー自給率は8%ほど。石油や石炭、天然ガスなどの化石燃料が8割以上を占め、そのほとんどを海外に依存しています。もしこのままの状況が続けば私たちの暮らしはどうなってしまうのだろうか?そのような疑問から、再生可能エネルギーの重要性を訴え続けて来た私は、これらを活用した事業化支援・普及啓発・人材育成に取り組んできたのでした。そういった取り組みの中で、葛尾村の葛尾再生戦略プランに位置づけられるスマートコミュニティ事業化にアドバイザーという形でかかわることになったことがきっかけで、今に至ります。

私たち葛尾創生電力の最大のミッションは、単なる利益の追求ではなく「地域に貢献」することです。本業の発電事業以外にも、たとえば生涯学習の場や交流イベントなどの企画・運営といった、地域住民の熱意や想いを出発点として、それを応援する形で貢献ができればと考えています。

私自身の原動力は何か、と問われれば、月並みな表現かもしれませんが、やはり「社会に貢献したいという気持ち」ですね。若いときはただ自己実現のため、承認欲求を満たすために働いていたけれど、人生経験を積むうちに考えが変わっていきました。仕事というのは社会を良くするため、人の幸せのためなんだと。そのやり方は人それぞれで、横断歩道で通学する子供たちを見送る黄色い旗を持ったおじさんも、工場で働く方々も、草刈りをする人もみんなそれぞれのカタチで社会に貢献している。私の場合はたまたまこういう方法だったということです。

(2020年4月 取材)


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