PLAYER INTERVIEW
私は、祖父が50年以上前に葛尾村で始めた石井食堂の3代目として、郡山の日本調理技術専門学校を卒業後、家業を継ぎました。震災後は三春町の仮設店舗で小規模ながら営業を続けていましたが、2017年7月、葛尾村内に新たに建設した店舗にて営業を再開できたときはとても嬉しかったですね。
店の規模は震災前の半分ほどしかないですが、お昼は村内に戻ってきた方や復興関連の仕事をしている人たちも食事に来てくれるので、毎日忙しく過ごしています。しかし、まだ居住人口が少ないので夜は本当に静かになりました。震災前は夕方から夜にかけて、仕事を終えた地域のお母さんたちが夕飯の買い出しに来てくれたり、夕食をここで済ませて帰る人などで賑わっていたのですが…。ただ、村内に帰還予定の方が増え、棟上げの際に振る舞うオードブルや刺身などの注文も徐々に増えてきたこともあり、震災前の水準とまではいきませんが、村で楽しく営業を続けています。
三春町の仮店舗で営業していた際、「このまま葛尾に帰らず、こっちで店を開かないか?」と声をかけていただいたことも何度かありました。でも、私たち家族にとっては「葛尾に帰る」という選択しか最初から無かったんですよ。祖父の代から地域で50年以上経営できたのは、ほかでもない、村の人たちあってのことですし。高齢化が進む葛尾村で、買い物先や外食先が隣町しかないって大変じゃないですか。だから、儲かる儲からない以前の問題で、自分たちを頼りにしてくれる人たちの声を大切にしたいという気持ちの方がずっと強かったんです。長年やっている店だからこそお客さんのニーズにも応えられるし、村民全員顔見知りみたいなものだから、好みなんかも分かってますしね(笑)。
震災前にあった店舗は8回くらい増改築をしてるんですけど、それは家族が増えたからといった理由ではなく、「宴会場を作ってほしい」とか「食堂の規模をもっと大きくしてほしい」という声に応えてきた結果なんです。だから、今後もし村の人口がもっと増えて、みなさんからの要望があったら、新しい店舗も少しずつ大きくしていくかもしれないです(笑)。村が将来どうなっていくのかは分かりませんが、これからも地域密着型の食堂として家族と支え合い、お客さんとのつながりを大切にした商売をしていきたいと思います。
(2018年3月取材)