INTERVIEW

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葛尾村立葛尾中学校 校長
佐藤 武 さん

私は安達郡白沢村という、今でいう本宮市の出身です。葛尾村から見ると地元は真西ですが、教員として葛尾村に赴任するまでは来たことがありませんでした。私が学校の先生になろうと思ったのは、住みやすい、いい社会にしたいと思ったからです。いろいろ経験し、どんなものでも認められる美術に魅力を感じ、中学校の美術の先生として就職しました。

震災当時は相馬市の教育委員会で働いていました。相馬市は津波の被害があり、無我夢中で被害にあわれた方の対応をしていました。平成24年からは葛尾中学校に教頭として配属され、避難先で授業を再開するために1年準備をして、平成25年に三春校を開校しました。その後一度離れましたが、平成29年に校長として再び葛尾中に着任。今度は学校を三春から葛尾に戻すという目的を、無事果たすことができました。こうした形で葛尾中学校に関われたことには、深い縁を感じますし、葛尾は私の人生の中で大きな何かを占める場所になりました。

東日本大震災によって失ったものは膨大です。それにより葛尾中学校は「課題先進校」になりました。いくつもの課題を解決しないと前に進みません。まず「極少人数」です。それでもどうやったら授業がうまくいくか、どうやったら子どもたちに力をつけてあげられるか研究し、いろんな挑戦をしています。10年後くらいには日本の多くの自治体で学校の子供の数が極端に減ってくるはずですから、私たちはフロントランナーだという気持ちで取り組んでいます。

たしかに今の葛尾中学校は極少人数教育ですが、村営塾やICT導入、海外研修なども実施できています。大きな学校に比べて劣る部分はありますが、それを補って余りあるくらいのメリットもあります。大規模学校の真似をしようとは全く思いません。少人数の強みを発揮すれば、子供たちは必ず伸びると思っているからです。実際に今、子どもたちは「JA共済小中学校交通安全ポスターコンクール 県教育委員会教育長賞、同全国コンクール 文部科学大臣賞」などいろんな実績を出しています。

葛尾中に来たお子さんたちに力をつけさせるために、私たちはできることは何でもやります。今後、正解のない課題が山ほど増えていく中でも、大いに活躍し、幸せに生きていけるようになってほしい。そのために必要なのは、今だけ良ければいい、自分だけ幸せならいいという考えではなく、周りの人も幸せになれるよう考えて行動することだと思います。また、中学卒業後に葛尾村を離れたとしても、村を忘れず、いわゆる関係人口の一人となって葛尾村に携わる人材になってもらえたらうれしいです。

(2021年2月取材。佐藤校長先生は令和3年度より新地町立尚英中学校に赴任されました。)


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