PLAYER INTERVIEW
吉田理容所は私で三代目になります。店舗兼住宅だったということもあり、髪を切るという仕事はもともと身近な職業で、将来は理容所を継ぐだろうと自然と考えていました。18歳まで村に住んでおり、高校の卒業を機にいわき市の理容学校へ進学。卒業後もいわき市の理容所で修業をし、私が28歳の時、父の死をきっかけに葛尾村に戻って店を継ぎました。
原発事故後は福島市の体育館に避難した後、三春町の仮設住宅へ移り住みました。町内で仮設店舗を設けるという話があったので、仮設店舗建設予定地の近くの仮設住宅へ引っ越しをし、同年の11月に営業を再開。その後復興公営住宅で新たな生活が始まり、公営住宅敷地内での店舗営業に移りました。店を継ぎたいという息子のためもあり、葛尾村での店舗営業を2019年に再開することができました。
現在は酪農家として村の牧場にも勤めており、復興公営住宅の店舗と葛尾村の店舗を掛け持ちしているので電話予約にて営業してます。来ていただいているお客様は神様のようなものだと思っています。祖母の時代から来ていただけてる方もいて、とてもありがたいです。ご高齢の方の中には送り迎えや出張サービスなどを行っています。仕事をする中で、やはりやりがいを感じるのは「気持ちよかった」「さっぱりした」といって喜んでいただいたときですね。顔剃りやシャンプーだけでも、気軽に立ち寄っていただけるような安らげる空間を作っていきたいです。
村の人口が減ってしまった今の村にはどうしても寂しさを感じてしまいますね。人口が増えて賑やかになった村の中で、お客様一人一人への丁寧な接客を続けていけたらと考えています。来年理容学校へ進学する息子は、私たちがお客様と会話している様子を見て、この仕事に就きたいと思ってくれたようです。そんな息子のためにも、これまでのご縁を大切にしながら新たなご縁も紡いでいけたらと思っています。
(2021年9月取材)