INTERVIEW

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工芸家 夢工房葛桜(かつろう)(葛尾村 野行地区)
大槻 勇吉さん

震災前は野行地区に住み、双葉地方森林組合に入って木を伐採していました。スギもヒノキも、なんでも切っていましたよ。

震災後に住んでいた仮設住宅はとても狭く、隣から住民の声が聞こえてきたり窓から中の様子が見えてしまったりと、プライバシーの確保が難しい環境だったため、なかなか気持ちが前向きにならず、これといった生きがいや趣味も持てませんでした。そんな状態で震災から1年が経った頃、特定NPO法人の「おにスポ」から「葛尾村民が生きがいを取り戻すため、仮設の木工加工場を開設して活動しないか」とお誘いがあり、木工細工を始めたのです。当時は時間だけはたくさんあったので、夢中になれることを発見できて本当に良かったです。以来、木工細工は私にとって心のよりどころのひとつになりました。

作品作りは全て独学で学びました。プレハブの工房も、電動ノコギリや彫刻刀などの道具も、全ておにスポに揃えていただきました。工房は最初、仮設住宅があった三春町の狐田に作られたのですが、そこからプレハブごと引越し、今は恵下越(えげのこし)の公営住宅にあります。材料の木材は、元々私が持っていて倉庫に保管してあったものや、周りの人が持ち寄ってくれたものを使っています。硬い木の方が艶が出てきれいなので、イチイ、ケヤキ、イチョウなどをよく使いますね。

4年半ほど前からは「しみちゃん(葛尾村公式イメージキャラクター)グッズ」として置物やストラップなどを作っていて、復興交流館あぜりあで販売されています。私のほかにもしみちゃんグッズを作っている方はいらっしゃいますが、少しずつ風合いが違って、やはり人それぞれの個性が作品にも表れるのだと思いました。ほかにも小さいダルマやフクロウの置物などを作っています。フクロウは恵下越集会所にも飾っていますよ。

今は野行地区にある愛宕(あたご)神社 の看板や賽銭箱など大きな作品も製作しているほか、自宅のテーブルやテレビ台などの家具もこだわって作っています。ものづくりが好きなので、木工細工は楽しくて時間を忘れてしまいます。これからも作り続けていきたいと考えています。

(2020年9月取材)


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